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カジュアルになりゆくビデオカメラ。

写真がデジタルになって、個人が保管するデジカメ写真の枚数はフィルム時代の数十倍にもなっているのではなかろうか?

その理由としては、フィルム代や現像、プリントといったランニングコストがかからないことが挙げられるが、僕はそれ以上に、写真のカジュアル化という要素が大きいと思う。これまで写真は、何かイベントがあるときに撮るものだったが、デジカメはそうした写真の概念を根底から変えてしまい、日常の記録ツールになってしまった。

僕は、ビデオカメラも、遅かれ早かれ、同じ道を辿ると思っている。もちろん、動画のほうがよりイベント性が強いから、デジカメほどカジュアルにはならないかもしれない。でも、ひとたび、HDDやメモリーカードを使ったビデオカメラを手にしたら、誰もが、従来のテープの数倍は多く撮影するようになるはずだ。例えば、8ミリビデオ方式やDV方式のビデオカメラで年に5〜6本(つまり5時間程度)撮影していた人が、今後、AVCHD方式のビデオカメラを使うようになったら、年間20〜30時間程度は撮るようになるのではないだろうか?(少なくとも、子供が生まれて、小学校を卒業するまでの12年間はそうなるだろう)。

ちなみに、20時間(フルハイビジョンはおおむね、1時間8GB)というのは容量にして160GB前後。ブルーレイディスクなら3枚強で済む計算だが、問題なのはディスク1枚に入るシーン数である。動画がカジュアルになるということは、どうでもいい日常茶飯事のワンシーンを撮ること、すなわち、1本当たりの動画の長さが極端に短くなるということに他ならない。例えば、年に20時間撮影するとして、そのうち、1時間程度の長尺ものが5本、残りは5分の短尺ものだった場合、年間の撮影本数は185本。もし、年30時間となると、305本の動画データが毎年たまっていくことになる(この場合、1枚のブルーレイディスクには約100個の動画が保存される)。

デジカメの場合、すでに撮影した写真は1万枚を超えているという人も少なくないはずだが、それでも検索に困っているという話はあまり聞かない。それは、メインの保存場所がパソコンのHDDであり、検索や閲覧が容易だからだろう。では、動画データの場合、どうなのか?

現在、AVCHD方式を強力に推進するソニーと松下は、ブルーレイレコーダーを使って、ブルーレイディスクに保存することを推奨しているが、前述のようなペースで動画が増えていったとすると、10年後、ディスクは30〜50枚、動画のカット数は2000〜3000にも上る。こうなったとき、ブルーレイレコーダーがどこまで役に立つのか、はなはだ疑問だ。
1枚に1タイトルとか2タイトルしか入っていない映画やアニメなら、ディスクが何十枚あろうと、探すのに困るということはないわけだが、5分程度の雑多な日常が記録された動画が100個も記録されたディスクの中からどれか1シーンを探したり、見たいシーンをダイレクトに選んだりするとなると、リモコン操作が基本のレコーダーでは無理がある。そもそも、AV機器は録画した番組やレンタルしたDVD、BDを再生するものであり、たくさんのファイルの中からあるファイルを検索するという発想では作られていない。

Xacti・DMX-HD1000を使うようになってから、僕は、ビデオカメラはパソコン寄りであるべきか、AV寄りであるべきかをずいぶんと考えてきたが、カジュアルな動画時代の最優先事項は「長期に渡ってさまざまな機器で再生できること」「たくさんの動画があっても素早く検索できること」であり、決して「高画質であること」ではない。とすれば、ファイル管理、検索という概念があり、デコーダーでさまざまな動画ファイルに対応できるパソコンのほうが融通性が高いのではないか、という気がする。
本当なら、AVメーカーには10年、20年といった単位での「動画再生保証」をして欲しいものだが、これまでVHS(VHS-C)、8ミリビデオ、Hi8、DV、HDV、DVD、そして、今のHDD、SD(MS)、BDと、信じられないほどの変わり身で新規格の商品を売ってきたメーカーにそれを望むのは無理だろう。

また、デジカメ画像のJPEGは、いみじくも、国際標準化機構(ISO) 、国際電気標準会議(IEC) と国際電気通信連合(ITU)で認められた世界規格。一方、AVCHDはあくまでもソニーと松下が策定した仕様にすぎないという問題もある。将来、もっとすごい圧縮技術と通信技術が登場する可能性だってあるし、そうなったら、ビデオカメラはあっという間にそっちにシフトしてしまうかもしれない(例えば、テレビ電話の延長のような技術で、撮影しながらリアルタイムでその映像を自宅のテレビに映し出すとか、ネットにアップすとか)。そして、そのとき、ソニーと松下がAVCHDを頑なに守り続けるとは、とても思えないのだ(他社が新技術でドンドン売っているとき、その波に乗らないわけがない)。

日本の今のビデオカメラは、フルハイビジョンがキーワードとなっているが、この流れがそのまま世界で通用するかどうかだってわからない。実は、DMX-HD1000の1280ピクセル×720ピクセルのほうが、ハイビジョンテレビでもそれなりにきれいにだし、ネットでの流通にも適しているという見方もできる。ハイスペックなものが生き残るとは限らないのが、デジタルの難しいところかもしれない。
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