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終わったな、日本の電子書籍。

binword/blogさんの「やっぱり売れていなかった電子書籍端末」でも書かれているが、ついにソニーと松下が電子書籍から撤退することになった(「電子書籍端末売れず──ソニーと松下が事実上撤退」)。

4年くらい前に、僕も「煮え切らない電子ブックリーダー」という記事を書いたが、今回の結末は、日本のメーカーが携帯オーディオプレーヤーの分野で失敗したのとまったく同じ構図だ。当初、日本の携帯オーディオプレーヤーは、音楽メーカーに配慮するあまり(ユーザーの利便性を無視し)、各社バラバラな規格を優先し、当時のデファクトスタンダードだったMP3オーディオすら再生できなかった。同様に、日本の電子書籍端末は、出版社を初めとしたコンテンツホルダーに配慮するあまり(ユーザーの利便性を無視し)、テキストやHTMLを表示したり、新刊をダウンロードしたりすることはできない。

さらに、似ているのは、音楽では、アップルがiPodという優れたハードとiTunesMusicStoreというサービスで一気に市場を確立したのと同様に、電子書籍では、(まだアメリカだけだが)アマゾンがKindleというハードとKindle Storeというサービスで、すでに商売が成り立っている点だ。つまり、大事なのはハードだけでなく、それを支えるサービスということだ。日本の出版社は、音楽メーカー以上に体質が古いので、アマゾンのKindleのようなビジネスモデルがそのまま日本で通用するとは思わないが、今後は、ハード主導で物事が成功するなんてことはありえないと思う。

唯一、成功しているようにみえる携帯電話を使った電子書籍市場だって、このままでは頭打ちになるはずだ。そこそこの液晶と通信機能を持ち、端末で直接コンテンツをダウンロードできるという点はKindleに近いが、売れているのは書店で流通しなくなった比較的古いコミックと新興出版社のいわゆるケータイ小説であり(隙間商売である)、本当の売れ筋である新刊書を大手出版社が電子書籍で売ろうという気はない。もちろん、携帯電話のような小さい画面でいいのかという問題もあるが、とにかく、iTunesMusicStoreがスタート時点で100万曲を用意したり、アマゾンが9万冊の書籍を用意したりといったサービスの拡充をしていかなければ、今、拡大しているといわれる日本の電子書籍にも未来はないだろう。

それにしても、なぜ日本のメーカーは同じ過ちを繰り返すのだろう?
まぁ、答えは簡単で、そこで働く人々は、社長以下、皆サラリーマンだからである。以前、電子書籍端末であるワーズギアの取材をしたことがあるが、そもそもワーズギアとそのサービスについては、松下、角川、TBSが出資して作ったワーズギア社がすべてを運営するというしくみで、どうみても、失敗したら潰せばいいという感じだった。もちろん、そこに勤める人々もそれを承知しているような雰囲気がした。
日本のメーカーは、結局のところ、自社のハードが売れればいいのであって、世の中のしくみを変えてやろうというということまでは考えていない。その責任もとりたくない(だからこそ、別会社である)。そこが、アップルやアマゾンといったIT企業とはまったく違うところなんだなぁと思う。

トップ自らが理想を掲げ、ユーザーの利便性を考えたハードとサービスを命がけで構築する。これくらいのエネルギーがないと、世の中のしくみを変えることはできない。電子書籍分野に進出するというのは、日本の出版のしくみを変えるということにほかならず、単に液晶で本が読めるということではない。この辺がわかっていなければ、今後、日本で電子書籍が再び命を吹き返すことはないだろうし、下手をすれば、Googleあたりに一気に持って行かれちゃうことだってないとはいえない(いや、iPhoneが先かもしれないが)。

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