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iPadとソニー・エアボード。



昨夜、iPadのプレゼンテーションを見て、軽い既視感に見舞われた。
僕は、これに近い商品をどこかで見たことがある。タッチパネル液晶を持ち、ネットにメール、動画に写真が楽しめる……。実はこれ、10年前に発売されたソニーのエアボード「IDT-LF1」そのものなのだ。
長文だが、当時の発表資料を引用してみると、こんな感じだ。
本機は、タッチパネル付き10.4型液晶パネルを搭載したモニターと、インターネットや電子メール、テレビ放送やビデオなど多彩な情報とつながるベースス テーションで構成された、全く新しいコンセプトのエンターテインメントシステムです。最新ワイヤレス通信技術、インターネット通信技術やデジタル動画圧縮 技術(MPEG2)を採用し、ベースステーションとモニター間で動画を伝送します。これにより、モニターを持って移動すれば、インターネットやテレビ放 送、ビデオを家中のどこからでもタッチパネルの簡単操作で楽しむことができます。また、家族が各々メモリースティックを持つことで個別にメールを管理でき る“ミーメール機能”や、デジタルカメラなどで撮影した静止画見たりすることができる電子アルバム機能を搭載しています。
 本機は、既存の情報機器にはない家電感覚の手軽さや使い勝手を実現することで、社会的に認識されつつあるデジタル・デバイド(情報格差)を解消し、PCを使ったことがなくても様々な情報に手軽にアクセスすることが可能となり、新しいネットワーク利用の可能性を大きくするものです。当社は、本機 を「ホームモバイル」という新しいコンセプトのもと、IT(情報技術)の普及に貢献すべく広く訴求していきます。
エアボードは、2000年9月28日発表。今からなんと10年も前に発表された商品ながら、コンセプトはとてもしっかりしている。ただ、エアボードの登場が早すぎただけだ。ちなみに、このエアボードは10.4型、800ドット×600ドットの感圧型タッチパネルを採用し、ベースステーションとは独自のワイヤレス方式で通信(無線LANも一般的でなかった!)。そして、なんとベースステーションとインターネットは56Kモデムで接続されていた。まだ光ファイバーも、無線LANも、iPodもYouTubeもなかったころに、こんな商品を開発したソニーの(当時の)先見性は大したものだ。

そして、iPadの発表である。
エアボードを知るものとしては、10年間の進化って、こんなものなの?  という気がしないでもないが、たぶんAppleの描く未来は間違っていないと思う(そして、エアボードとは比べものにならないほど美しい)。昨夜のジョブズのプレゼン、ひいてはiPadそのものに物足りなさを感じた人も多いようだが、iPadはiPhoneと同じiPhone OSを使ってはいるものの、iPhoneの延長線上にある商品ではない。そもそも、iPhoneは一人一台があたりまえの携帯電話市場で、携帯電話からのリプレースをねらった製品。それゆえ、すでに3000万台以上出荷しているわけで、それと同じようなインパクトをiPadに求めるとしたら、それはお門違いだ。

実際、iPadは、昨日のプレゼンでジョブズが説明したように、iPhoneとMacの間を埋める商品である。僕はそのすき間にiPhoneやMacを超える需要があるとは思わないし、それはAppleとて同じことだろう。つまり、iPad第1号はその辺を確かめる商品という気がする。そもそも、ソニーのいうところの「ホームモバイル」と、ネットブックに代表される「リアルモバイル」のどちらにより大きな需要があるのか、それすら明確ではない(個人的には、この両方を相手にしないと商売は難しいと思うが)。

では、そんなすき間を埋める商品に、Appleは、なぜMac OSではなく、iPhone OSを採用したのだろうか? これについては、僕もいろいろと考えたが、「もはや、市場はそこしかないから」という結論に達した。もちろん、iPadにMac OSを載せるという選択肢もあっただろうが、Mac OS自体はパソコンのOS自体の数%のシェアしかなく、ここでMac OS搭載のiPadを出したとしても、それはタッチパネル対応のMacが出ましたというニュースでしかない(キーボードのないネットブックになってしまうし)。それよりは、今、飛ぶ鳥を落とす勢いのiPhoneの知名度を生かし、その大きい版が出たとアナウンスしたほうが、世間での注目度は高い。実際、今や、Macはよく知らないが、iPhoneは知っているという人のほうが多のではないだろうか?

また、iPhoneというのは、よくも悪くも受動的な端末で、とにかく、ほとんどの行為はブラウズやダウンロードが中心だ。一方、パソコンの場合は文字やイラストを入力し、映像や写真を取り込み、それを出力するという能動的な行為が多くなる。が、AppleはiPhoneの成功から、パソコンではない(能動的ではない)「モバイル」の形を模索しようとしているのではないだろうか? それゆえ、iPadはMac OSではなく、iPhone OSを採用した。そして、そうでなければ、わざわざAppleが遅れて、このすき間に参入する意味がない(Mac OS搭載ネットブックを喜ぶ人もいるだろうが、そんな人はごくわずか)。

とまぁ、以上のような感じで、とりあえずiPadを消化することにした。もちろん、それでもなお、iPadは本当にこれでいいのか? という気持ちは解消されない。きっと、これは日本での発売まで続くだろう。iPadはそれくらいわかりにくい製品だが、それはチャレンジしている裏返し。そういう意味では、iPadは実にAppleらしい製品なのかもしれない。

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