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iPadとビューンと出版社。

新聞・雑誌・ニュースを定額で楽しむことができる電子配信サービス「ビューン」が、昨日からスタートした。アクセスが多すぎて、コンテンツがまったく表示されないというトラブルもあったようだが、まぁこの問題はいずれ解決するだろう。

ただ、そのトラブルもあってか、ブログ記事を見ると、けっこう賛否両論。ちなみに、僕は、やっぱり紙のレイアウトをそのままiPadに置き換えるのは無理があるなぁと感じた。確かに、月額450円(iPadの場合)で、31の新聞や雑誌が読める(雑誌によって、読める記事は全部だったり一部だったりする)のは、暇つぶしのコストとしてはあり、かもしれない。でも、これが出版社にとって本当にビジネスになるのか、僕は非常に疑問だ。

ビューンの蓮実社長は「1〜2万人というレベルではない大きなサービスにしたい」とのことだが、仮に10倍の10万人(iPhone+iPadユーザーの合計が300万人として、3.3%)のユーザーが獲得できたとして、総売上は4500万円(450円でざっくり計算した場合。iPhoneは350円なので、実際にはもっと下がる)。で、そこから、Appleが30%(1350万円)を取り、ビューンが10%(450万円)を取ったとすると、残りは2700万円。これを新聞社や出版社がどう按分するかはわからないが、仮にコンテンツごとに等分したら、2700万円÷31=87万円。参加している21社で割ったら、128万円。もし、今後、さらにコンテンツや出版社がが増えていくと、その取り分はどんどん低くなっていく可能性もある。

しかし、いくら出版社の懐が厳しいとはいえ、上記のような計算では、どこも話に乗ってこないだろう。ユーザーが1万人しか獲得できなかったら月のもうけは8万〜12万円くらいにしかならないからだ。では、どうして、これだけの出版社が参加することになったのだろう? 一つ考えられるのは、ソフトバンクとビューンが年間いくらみたいな感じで出版社にお金を払っているというパターンだ。例えば、ユーザー数にかかわらず、コンテンツ提供料として1社あたり年間1000万円払いますということなら、乗ってくる出版社は多いはずだ(コンテンツはおまかせだが、毎月何ページ以上は提供することとか、いろいろ決まりはありそうだ)。もちろん、ソフトバンクは、それによってiPhoneやiPadのパケット上限をしっかり確保できるし、新規ユーザーを呼び込む宣伝材料にもなる。ビューン自体の将来性は疑問だが、ソフトバンクとしては、新たなコンテンツを作り出すことなく、新しいチャネルが手に入るわけだから、そんなに悪い話ではなさそうだ。

問題は出版社だ。もちろん、ビューンによって、これまで獲得できなかった読者を獲得できる可能性もあるが、逆に、本を買っていた読者がビューンで満足する、もしくは、本を買うまでもないと切り捨てる可能性だってある。個人的には後者の可能性が高いと思う。iPhoneやiPadを使おうという人はそれなりにアンテナをはっている人なので、ビューンによって読者の新規獲得ができるというのは幻想じゃないかな、と思う。今の雑誌は、たとえ300円や400円でも、読者はそれを買おうか買うまいか迷っている。どちらかというと、買わないでいい理由を探していると考えていたほうがいい。つまり、ビューンの人気が出れば、結局は紙の雑誌は売れなくなっていく。かといって、ビューンが人気になったからといって、出版社が儲かるということにはならない。

僕は、今回のビューンのビジネスを知って、何だか電子辞書に似ているなぁと思った。電子辞書は、今や100コンテンツが当たり前という状況だが、これはカシオやシャープが出版社の足元を見て、安く買い叩いてプリインストールしているものだ。もちろん、出版社にとっても、売れないコンテンツを抱えているよりは1コンテンツいくらで買ってもらったほうがメリットがある。しかし、コンテンツは買い切りだから、いくら電子辞書が爆発的にヒットしても、出版社には最初のお金しか入らないというわけだ。

iPadの登場で、出版業界は、今後、これまでにはなかったさまざまなビジネスモデルに巻き込まれることになるだろう。でも、主体性もなく、コンテンツへの愛情もなく、ただ単に目先の金儲けに走ったら、手痛いしっぺ返しを食うことになるのは間違いない。A4の見開き前提でデザインされた雑誌の見せ方を、そのままiPadやiPhoneで展開するなんてやり方は、余りにいい加減すぎると僕は思うが(液晶画面で見るのに、背景が白というのも大問題)、こうしたことに気づいて軌道修正をするのか、それとも、やはり雑誌の体裁では読みにくいとユーザーが離れて行くのか、これからの1年は実に興味深い。

ちなみに、日本の出版社が最低限、目指すべきは、WSJ(The Wall Street Journal)のアプリだろう。無料で体験できるので、iPadユーザーはこれが真のアプリ電子出版か! というのを味わってみてほしい。

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  • 2010/06/06 1:05 AM
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